2025年6月6日

【神は細部に宿る】の写真1

店のドアが開いた、その瞬間。 

  

そのお姿と纏われた空気に

私はすぐに気づきました。

 

20年ほど前

「プロフェッショナル 仕事の流儀」で

拝見したあの方だと。

 

画面越しに受け取ったお言葉は

今でも鮮明に心に刻まれています。

 

まさか、

自分の店に

そのご本人が来てくださる日が来るとは

夢にも思いませんでした。

 

お帰りの際

ほんの一瞬の迷いがありましたが

思い切ってお声をかけさせていただきました。

 

失礼を承知で

それでもどうしても

伝えたかったことがありました。

 

修行時代

録画したその回を何十回も見返し

何百回もその言葉を思い出し、

包丁を置いてしまいたくなった時も

「神は細部に宿る」と

自分に言い聞かせながら

何千回と包丁を握ってきたこと。

 

技術だけでなく

心の在り方までも教えてくれた

そのお言葉は

私にとって

まさに「仕事」や「人生」の

道しるべでした。

 

伝えきれないほどの感謝を

不器用にお伝えした私の想いを

その方は

とても丁寧に受け止めてくださり

穏やかな笑顔でこう返してくださいました。

 

「こんな私の出演した放送が、

誰かの支えになっていることは嬉しい限りです。」

 

その言葉に、また

感銘を受けました。

 

ただのテレビ番組ではなく

そこには本物の覚悟と美学があり

 

一流とは、

本物とは、

この方のことなのだと

 

本物に触れたからこそ

当時の私も「丁寧に仕事に向き合おう」と

心底思えたのだと思います。

 

「神は細部に宿る」

 

この言葉は、私にとって料理の礎であり

人生そのものを支えてくれる言葉です。

 

どれだけ忙しくても

誰にも気づかれなくても

見えないところこそ丁寧に仕上げる。

 

そうすることで

料理の奥にある

“想い”が届くと信じています。

 

 

今回のご来店は、

そんな信念をもう一度しっかりと見つめ直す

大切なきっかけになりました。

 

お話しできたこと、

目の前で感謝を伝えられたこと、

すべてがかけがえのない時間でした。

 

この日の出会いに、心より感謝しています。

 

そしてまた、精進いたします。

 

料理人として

細部まで心を配り、

人として、今できる最善を

ひと皿に込めてまいります。

 

杉野英美さん(イデミ・スギノ)

金子美明さん(パリセヴェイユ)

津田励祐さん(グラン・ヴァニーユ)

 

皆さまが築かれている世界の細部が

どれだけ多くの人に勇気と幸せを

与えてくださっていることか

 

あらためて御礼申し上げます。

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