2023年5月15日

【包丁と共に】の写真1

深夜の調理場。

約1時間かけて包丁を研ぎ澄ます。

ひたすら無心に。


包丁を研ぎ終え、ふと思い出す。


初めて包丁を買った日の事。
お世話になった方から包丁を頂いた事。
仕事終わりに、毎日寮で包丁を研いだ事。


和食の料理人は揃える包丁の種類が多い。
仕事の上達と共に、少しずつ揃えていく。


若い頃は数少ない包丁を駆使して、

仕事を覚える事が楽しかった。


私は恵まれた事に、

自身の結婚式の日に、お世話になった方から、

その方が少しずつ買い揃えて使い込んだ包丁を何本も頂いた。

料理人から経営者になる覚悟を、包丁と共に示してくれた。

 


金沢の料亭時代、仕事が終わり寮に帰ると

自分よりも一回りも離れた若い料理人仲間が、

一斉に包丁を研ぎ始める。

 

1日も欠かさず毎日毎日。

私も一緒になって毎日研いだ。

 

有名料理屋たる所以を

垣間見るいい経験をさせて頂いた。

 

今もあの頃の仲間達は、

日本各地で毎日包丁を研いでいるのだろうと、

いつも包丁を研ぎ終えると想いを馳せる。


初給料で買った包丁
頂いた包丁
思い出が詰まった包丁


この先もずっと
この包丁と共に歩んでいく私の物語。

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