2021年6月9日

「木型」と「和三盆」の写真1

和菓子の記憶は

いつも優しくて、幸せ。

 

祖父はよく、幼い私に

優しい甘さの

和菓子を食べさせてくれました。

 

手に乗せてもらった

小さくて愛らしい落雁を口に運んでは、

「おいしいね」と、微笑みあったことを

鮮明に覚えています。

 

いつか落雁を「紡ぎ」で形にしたい。

強い願いがありました。

 

先日、

国内だけでなく、

海外でもご活躍されている

香川県の菓子木型職人・伝統工芸士

市原 吉博さんから、

 

来春のお店のオープンに向けて

「紡ぎ」のロゴマークの木型を彫ってくださったと

夢のようなご連絡をいただきました。

 

以前、私が

高松歴史礼賛の動画を拝見し

市原さんの職人魂の込められた

素晴らしい木型について知り、

ご家族へのあたたかな想いに触れ、

 

どうしてもこの方に

木型を彫っていただきたい

 という思いを綴った手紙を

 

どんな表彰状にも勝る物でした、と

大切にとっておいてくださった市原さん。

 

丁寧に包装された包みをひらくと、

市原さんがコリコリと

時間をかけて彫ってくださった

「紡」の美しく繊細な木型と、

 

その木型を使って

娘さんが作ってくださり

奥様が包んでくださった

愛らしい色とりどりの和三盆が

綺麗に並んでいました。

 

なんて美しいのだろうと

心が震えました。

 

木型を手にしたとき

私の中に流れ込んできたのは

市原さんの魂です。

 

職人さんの人生の重み。

黄綬褒章を受賞し、

現代の名工であられる気高い威厳。

 

なによりも木型への深い愛情が

流れ込んできました。

 

「和菓子っていうのはさ、

 慶事をつつましく

 華やかせることもできるんだ、

 反対に弔事をさりげなく

 慰めることもできる。

 葬式まんじゅうだって、

 落雁にしたってさ、

 甘いもんを口にすりゃ

 少しは救われるだろ」

(木内昇著 よこまち余話)

 

市原さんは木型を通して

たくさんの方の慶事やお祝い、

そして

たくさんの方の悲しみにも

寄り添っていらっしゃいます。

 

だからこそ

私は市原さんに惹かれ、

この方の想いと伝統を、

紡ぎの女将として

大切に繋いでいきたいと思いました。

 

いただいた木型に

「生きる糧となるお料理と時間と

おもてなしのある紡ぎで在り続ける」

という、こころざしと覚悟も吹き込みます。

 

日本の心を、伝統を、

そして溢れる優しさと美しさと

エネルギーを、

魂を受け継がせていただく喜びを、

紡いでいく未来を

本当にありがとうございます。

 

和三盆糖の優しい美味しさに

顔がほころびます。

 

紡ぎらしい和三盆を打って

懐石料理の最後にお抹茶と共にお出しして

沢山の方の

やわらかな笑顔に繋げていきます。

 

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菓子木型職人・伝統工芸士 

市原 吉博さん

1946319日 香川県生まれ

1968年 家業の木型の卸業に従事

1973年 木型職人として彫り始める

1999年 香川県の伝統工芸品に

菓子木型が指定され、

県の伝統工芸士の認定を受ける

20041125日 厚生労働大臣より、

卓越技能章「現代の名工」の授与を受ける。

20061116日 黄綬褒章拝受拝

https://www.kashikigata.com/

 

「豆花」代表・講師 上原あゆみさん

1974年 高松市生まれ

2009年 「豆花」設立

2012年 ロサンゼルス裏千家ワークショップ開催

2017年 ロンドン JAPANソサイエティー、ジュネーブ、ハイデルベルクにてワークショップ開催

2018年 台湾・上海・ミュンヘン・チューリッヒにてワークショップ開催。

https://www.mamehana-kasikigata.com/

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